偲び草 巻之四
十三日の十三佛虹参りのつづき。
豊昌寺でお茶と御菓子をよばれた後、七時半過ぎに落慶成った久昌寺に到着。お天気は台風一過の風が心地よい日本晴れの快晴秋天のもと、ずっしりと頭を垂れた黄金色の稲田が広がる一年で一番めでたい実りの日を迎えておりました。駐車場に車を止めたら久昌寺女房さまのしげみさんが病み上がりで道路や本堂前を箒で掃き清めており、黒白の毛並みの猫がそれを見ていた。
猫の手を 借りむと欲す いかんせん
猫に手は無し 有るは前肢(まえあし)
昔ながらの豐嶽山久昌禪寺鐘楼山門をくぐって境内に踏み入れると、落慶成った本堂屋根の軒下がぐるりと五色の幔幕で飾られてさながら雨後にかかる虹の橋のごとし。
雨漏れし 甍(いらか)治して 虹架かる
豐嶽山の 門をくぐれば
久昌寺様本堂屋根修繕葺き替え落慶法要おめでとうございます。
このたびがわが今生で最後の落慶法要なので、そのかみ昭和二十九年久昌禅寺本堂で仏前結婚式を執り行った豊岳正道悦子拈華微笑一代夫婦の生前近影写真を持参して、同行のさだ美さんに持って貰って本堂前とご本尊様御仏壇前に立って貰い、岩国豊岳家仏前挙式同行四人(笑)が久昌禅寺豊昌寺玉野二寺参禅参詣の記念撮影をした。
本堂屋根葺き替え普請落慶とあわせ、このたび久昌禅寺のお嬢さんゆかちゃんが本堂で仏前挙式して、お婿さんが僧堂へ参禅住職修行に赴いていただけるとのこと、真におめでとうございます。
台所でご挨拶しておいとまする際にゆかちゃんが落慶法要の紅白餅を二組お布施くださいました。施餓鬼供養まことにありがとうございます。
喪中へも 紅白餅の 供養あり
有漏(うろ)を無くせる 用吉の寺
このたびの玉野二寺禅参りで、岩国から近い久昌禅寺に先立ってより遠い豊昌寺をお参りしたのは日の出を拝むためであった。
いつも豊昌寺へ向かう道すがらに久昌禅寺が常山のふもとに遠景で見えるのであるが、今回久昌禅寺の前ですでに日が昇っていたのに見慣れた久昌禅寺の屋根を見つけるのに苦労したのである。
その理由は久昌禅寺で判明した。
今回雨漏りがひどくなった本堂屋根の修復に当たり解体してみたら、土台の本堂床組まで修復が必要とわかり、本堂屋根を元々の重厚な本葺き瓦にすると重量を支える土台の修復に時間と資金がかかりすぎて不足するため、より軽量の平葺き瓦屋根を採用したことで落慶後の本堂屋根の外観に変化が生じたためであった。
おそらく室町時代以来の本堂屋根を伝来の本葺瓦で修復するのは久昌禅寺現住澄明和尚の次代住職の普請にお任せすることになろうから、
代々にわたって寺の旧を世々久しく日々守り伝えることが作務である久昌禅寺ご住職様は、
無常の世に聳える常山の麓で毎日参禅読経六根清浄照顧脚下に塵を払い垢を除き仏祖不傳の妙道を胸間に掛在し拈華微笑して、
いっそう臨濟禅宗門安心のお務め
行住坐臥只管打坐達磨菩薩行事仏道
日々是好日がんばってくださいね(笑い)。
臍下丹田に力を篭めて無財七施慈眼微笑
諸悪莫作衆善奉行一切衆生皆悉成仏
南無三宝。